ヤブコウジ
【やぶこうじ科マンリョウ属】

 育ててくれた伯母夫婦の家は山の上にあって、数ヶ所、5〜6反歩の田畑がありましたが、畠はどういうわけか多くは山の上にありました。
 畠に行くためには、一旦山を下りてから、また登らねばなりません。
 動力は人の力だけでしたから、収穫したものは背負いかごや背負いハシゴで運びました。
 重いサツマイモなど運ぶとき、情けないほど辛かったものです。
 雑木山の、急なだらだら坂の中ほどに、背負ったまま腰掛けることが出来る休み場があって、ここでの一休みの嬉しかったこと。

 目の前の落ち葉の間から、まるで宝石のように鮮やかな、紅の実が生っていました。もう60数年前のことです。お正月用の松竹梅の、寄せ植えのアクセントに使われることを知ったのは、大人になってからのことです。

 行き帰りした、生産効率の低い畠は山にかえり、燃料は石油になって、通る人のない山道は、曾ての踏み跡が残るだけです。

リス ト トッ プページ